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MY CAPTAIN』覚書

 

人は人と出会わなくても生きていける。

言い換えると、独りを埋める相手を人だけに求めなくなった。

意図してか結果としてか、今はそれでも生きていける。誰でも、その選択が出来る。

 

それを否定することもできる。

私も芝居なんぞ捉まえて、誰かと何かをウジウジやっていたい人間である。

これまでに書いてきた作品も、そういうウジウジをドタバタとやる芝居であった。

だが、今回はそんな自分とは違う・・もしかしたら、確実に、自分の中にも居る・・独りを何かで埋めて生きている人を描きたい。

それは八面六臂のヒーローでも、悲劇のヒロインでもない。

人が観たがる妄想ではないかもしれない。しかし、そんな人々が居る空間を作りたい。

 

それはいくつかの物語となって存在するだろう。

それらは劇空間に同時に存在しているはずだ。

そしてそれは、出会わない物語達である。

出会う事無く、同じ空間に存在しているのである。

散らばった物語達が空間に充満しているのだ。

 

それでも、それでもなお、

バラバラと生きている物語達を

一陣の風が吹き抜けていく。

この『MY CAPTAIN』という芝居は、

人は独りでは生きられないと

信じている演劇人の作品である。

 

瓶詰ジャパニーズ 内河啓介

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